この記事では、障害者控除を年末調整で受けるためにどういったことをすればいいか紹介しています。
障害者控除は、自分だけでなく一緒に暮らしている家族の分も受けられますが、会社には言いたくない方もいらっしゃるかと思います。
そんな方が取るべき方法についてもお伝えしています。
- 障害をお持ちの人
- 障害をお持ちの方を扶養している人
- 年末調整の担当者
- 年末調整で障害者控除を受ける方法
- 扶養控除等申告書の書き方
- 年末調整以外で障害者控除を受ける方法
障害者控除とは
納税者自身、同一生計配偶者又は扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを障害者控除といいます。
なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。
障害者控除は、所得税と住民税において控除が受けられる制度です。
控除の金額は、所得税と住民税で若干異なり次の表のようになっています。
区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者(注) | 75万円 | 53万円 |
(注)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方です。
所得税の税率は最低5%で段階的に上がっていき、住民税の税率は10%です。
障害者控除を受けると、
- 所得税:27万円×5%=13,500円
- 住民税:26万円×10%=26,000円
少なくとも合計で約4万円の節税になります。
障害者控除の対象者
障害者控除の対象となるのは、次のような方です。
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人→特別障害者に該当
- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人→重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者に該当
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人→障害等級が1級の人は、特別障害者に該当
- 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人→障害の程度が1、2級の人は、特別障害者に該当
- 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が1、2又は4に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人→市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は、特別障害者に該当
- 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人→障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者に該当
- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人→特別障害者に該当
- その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人→特別障害者に該当
療育手帳の交付を受けている方は、障害者控除の対象です。
身体障害者手帳が交付されない軽度の障害者の方は、残念ながら障害者控除の対象外となっています。
海外に住む障害を持つ家族の生活の面倒を見ているときは、障害者控除の対象になる可能性があります。
必要になる書類があるなど、通常の障害者控除よりも複雑になるので国税庁のホームページでご確認ください。
扶養控除等申告書の記載が必要
障害者控除の適用を年末調整で受けるためには、扶養控除等申告書の赤枠で囲ったところに必要事項の記載が必要です。
誰で障害者控除を受けるかにかかわらず、この場所に記載していくことになります。
適用を受ける方の具体的な内容についても記載することになっているので、書き方もご紹介します。
障害者控除を本人が受けるとき
【一般の障害者に該当】
障害者のところにチェックを入れ、一般の障害者・本人のところに「〇」と書きます。
左記の内容のところには、障害の程度(等級)などの障害者に該当する事実や障害の状態・交付を受けている手帳などの種類と交付年月日を記載します。
一番右の異動月日及び事由の欄は、その年に障害を負ってしまったときに記載することになります。
わかりやすいように赤字で記載していますが、実際に書くときは黒のボールペンで書いてもらって大丈夫です。
【特別障害者に該当】
一般の障害者と記載内容はほぼ同じです。
「〇」をつけるところを間違えないようにしましょう。
つけ間違えると控除の金額が大きく変わってしまいます。
障害者控除を配偶者が受けるとき
【一般の障害者に該当】
障害者のところにチェックを入れ、一般の障害者・同一生計配偶者のところに「〇」と書きます。
左記の内容のところには、障害の程度(等級)などの障害者に該当する事実や障害の状態・交付を受けている手帳などの種類と交付年月日を記載します。
自分が障害者控除を受けるときと違って、配偶者の名前も書くことになります。
【特別障害者に該当】
「〇」をつける場所だけ間違えないようにしてください。
他は、一般の障害者のときと同じです。
【同居特別障害者に該当】
特別障害者に該当する方と同居しているときは、控除額が上乗せされます。
記載内容は今までと同じです。
ここでも「〇」をつけるところだけ気をつけてください。
障害者控除を扶養親族が受けるとき
【一般の障害者に該当】
障害者のところにチェックを入れ、一般の障害者・扶養親族のところに「〇」と人数を書きます。
左記の内容のところには、障害の程度(等級)などの障害者に該当する事実や障害の状態・交付を受けている手帳などの種類と交付年月日を記載します。
自分が障害者控除を受けるときと違って、扶養している家族の名前も書くことになります。
【特別障害者に該当】
「〇」をつける場所だけ間違えないようにしてください。
人数の記載も忘れないように。
他は、一般の障害者のときと同じです。
【同居特別障害者に該当】
特別障害者に該当する方と同居しているときは、控除額が上乗せされます。
記載内容は今までと同じです。
ここでも「〇」をつけるところだけ気をつけてください。
同居の定義は?
特別障害者に該当する場合、「同居」しているかどうかで控除額が大きく変わります。
同じ家に住んでいるなら問題ありませんが、住んでいなくても同居に該当するときがあるので注意が必要です。
生活費を稼いでいる世帯主が単身赴任などで自宅から離れて暮らしている場合、自分の配偶者と子供と障害のある親が同居しているケースを考えてみます。
世帯主が別の家に住んでいるので同居に該当しなさそうですが、配偶者と障害のある親が同居しているので、このケースでは「同居」として扱います。
また1年以上の長期にわたる入院であっても「同居」として取り扱ってくれます。
ただし、生活費などの面倒を見ている場合でも、老人ホームなどに入居しているときは、完全に住む場所が違うので「同居」には該当しません。
障害者控除を受けるために書類の添付は必要か?
障害者控除を年末調整で受けるために障害の程度などを証明するための書類の添付は、税法上は必要ありません。
ただし、社員の年末調整を間違っていたときのペナルティは会社が負います。
よって実務上は、障害者手帳などのコピーの提出を求められることが多いです。
会社に言いたくないときは自分で確定申告
会社に自分や家族の障害のことを言いたくない人もいらっしゃるかと思います。
こういったケースで障害者控除を受けるためには、確定申告(税金を返してもらうので還付申告という)をしてください。
所得税は直接振り込まれるので問題ないのですが、住民税のほうに少し問題が。
通常、平成30年分の還付申告は、平成31年になってから行います。
その内容をもとに住民税が計算され、平成31年6月からの特別徴収分に障害者控除を受けた結果が反映されます。
そうすると会社の給料担当者に障害者控除を受けていることが、ばれる可能性があるのです。
ですので還付申告をするタイミングをあえて1年ずらし、平成32年に行います。
還付申告は、法律上、その年の翌年1月1日から5年間提出することが認められているので1年遅れても問題ありません。
平成30年分を平成32年に入ってすぐしてしまうと、平成31年6月からの特別徴収分に反映されてしまうかもしれません。
4月頃に還付申告をすると市役所の手続きも間に合わないので、直接住民税の還付を受けることになり、会社にもばれなくて済むと思います。
どうしても会社に言いたくないときは、少し手間がかかりますが、このようにして障害者控除を受けてください。
まとめ
知らずに控除を受けていない方がいらっしゃるのではと思い、障害者控除を紹介しました。
対象なのに控除を受けていないと、かなり税金的には損をしていることになります。
会社に障害のことを言いたくなくて障害者控除を受けていなかった人は、自分で還付申告をしてぜひ障害者控除を受けてください。
はじめて年末調整を担当する方には、こういった本がおススメです。