給与の仕訳は、いくつもの項目から成り立っているので仕訳が複数行になるケースが多くなります。
控除の項目が多いため額面=手取り額とはならず、そのためミスが起こりがちな仕訳になっています。
経理初心者の方向けにオーソドックスな給与の仕訳方法について解説していきます。
- 初めて経理を担当することになった方
- 給与の仕訳がイマイチ理解できていない方
給与計算について
実務で給与計算を担当するためには、所得税・住民税といった税金の知識、厚生年金などの社会保険の知識が必要となります。
- 額面に対していくらの源泉所得税がかかるのか
- 住民税はどうやって計算するのか
- 厚生年金や健康保険、雇用保険はいくら天引きすればいいのか
といった各控除項目について具体的な計算方法については今回はふれません。
社会保険の手続きについても省きますのでご了承ください。
給与の仕訳に登場するもの
一般的に給与明細に載ってくる項目を並べてみました。
まずは借方に出てくるもの
- 基本給
- 役職手当や住宅手当などの各種手当
- 通勤手当
1と2はまとめて給与手当(または給料手当)を使います。
通勤手当は、適正な金額であれば所得税の非課税項目になるので1、2とは別に旅費交通費を使います。
次に貸方に出てくるもの
- 所得税(源泉所得税)
- 住民税
- 厚生年金
- 健康保険
- 雇用保険
1から4については預り金、5については立替金を使います。
預り金については、補助科目などを利用して残高のチェックができるようにしましょう。
5については様々な仕訳方法があり、残高をチェックしなくてもすむ法定福利費を使ったやり方が一番簡単です。
少し問題点のあるやり方になるので、今回は立替金を使って説明していきます。
先に労働保険料を支払ったときの仕訳
労働保険は、労災保険と雇用保険の2つの総称です。
年度の始め(毎年4月)に向こう1年間分の保険料を概算で従業員の賃金総額をもとに計算して支払います。
そして1年がたって従業員の賃金総額が確定した後に、もう一度保険料を計算して精算する仕組みをとっています。
労働保険の負担者は、厚生年金や健康保険と同じで会社と従業員です。
そのため労働保険料を概算で支払ったときに、次のような仕訳をします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
法定福利費 (会社負担分) |
〇〇円 | 普通預金 | ○○円 |
立替金 (従業員負担分) |
○○円 |
従業員が負担すべき金額については、先に会社が支払う形になるので立替金を使っています。
従業員に給与を支払うときに、会社が立て替えた分を回収していくイメージです。
給与の仕訳方法
今回は、サンプルの給与明細を使って給与の仕訳を作っていきます。
記帳の仕方は次の2パターンです。
会計的に正しいのは給与計算の締め日に記帳するほうです。
ただ、小規模な会社では給与の支給日で記帳している会社が多いような気がします。
給与計算の締め日で計上するとき
締め日時点ではまだ給与の支払いをしていないので、未払費用を使います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与手当 | 310,000円 | 未払費用 | 253,746円 |
旅費交通費 | 10,530円 |
預り金 (社会保険料) |
45,552円 |
立替金 (雇用保険料) |
962円 | ||
預り金 (所得税) |
7,070円 | ||
預り金 (住民税) |
13,200円 | ||
合計 | 320,530円 | 合計 | 320,530円 |
会社によっては、未払費用のところを他の経費と区別するため未払給与として処理をしているところもあります。
給与手当は、月給・役職手当・業務手当の合計です。
給与明細の支給欄の合計と借方の合計額が一致します。
健康保険と厚生年金は、預り金(社会保険料)としてまとめました。
会社によっては、別々に預り金として処理をすることもあるかと思います。
給与を支給したときは以下の仕訳になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払費用 | 253,746円 | 現金預金 | 253,746円 |
給与の支給日で計上するとき
支給日で記帳するので、未払費用が現金または普通預金となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与手当 | 310,000円 | 現金預金 | 253,746円 |
旅費交通費 | 10,530円 |
預り金 (社会保険料) |
45,552円 |
立替金 (雇用保険料) |
962円 | ||
預り金 (所得税) |
7,070円 | ||
預り金 (住民税) |
13,200円 | ||
合計 | 320,530円 | 合計 | 320,530円 |
支給日で記帳するときのポイントは、決算時に翌月支給分を未払計上しないといけない点です。
3月決算の会社で考えると、4月に支給する給与は3月の分になるので決算時点で計上する必要があります。
給与計算のタイミングが末締めでないとき
給与計算が末締めだとまだ仕訳を作っていくの楽だと思います。
ただし、給与計算のタイミングが例えば20日締め翌月10日払いとかになると少しややこしくなります。
期中はいいとしても決算時には21日から月末までの分を日割りで計算し、未払費用として計上する必要が出てくるからです。
従業員の数が少なく日割り分が少額であれば、そこまでしなくてもいいかなと個人的には思いますが。
まとめ
給与計算の仕訳は項目がたくさん出てくるので苦手にしている方も多いかと思います。
預り金などの残高のチェックも重要で、間違えたまま進むと貸借対照表の数字がおかしくなってしまいます。
まずは自社の給与明細から各項目にどの勘定科目をあてはめるかわかるようになりましょう。
経理だけでなく社会保険の手続きなど事務を全て担当している方にはこういった本がおススメです。