外注費と給与では税金の取り扱いが違うので税務署も厳しくチェック!

個人に対する支払いが外注費なのか給与なのか税金の取り扱い上は、非常にデリケートで判断が難しいです。

 

特に税務署の調査を受けた場合に、外部の業者へ仕事を依頼することが多い建設業やIT関係の業種でよくもめる論点です。

 

税務調査で指摘された場合に、大きな損害を受ける可能性もある外注費と給与の違いについてご紹介します。

 

この記事を読んでほしい人
  • 外注費と給与の税金の違いについて知りたい人
  • 個人への支払いが外注費になるのか給与になるのか判断したい人

 

この記事を読んでわかること
  • 外注費と給与をどう区別するか
  • 税務署に指摘されたときのダメージ

外注費と給与はどう違う

形式的に外注費と給与の区別は、個人への支払いが請負契約に基づくか、雇用契約に基づくかで行います。

外注費とは

民法の第632条で請負とは、

 

 当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

と定められています。

給与とは

雇用とは民法の第623条において、

 

 当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

と定められています。

 

ちなみに給与と給料は同じ意味で使われている方も多いかと思いますが、明確に違いがあります。

 

会話の中でよく使われる給料は、基本給や本給と呼ばれる部分のことです。

 

そして給与とは、給料に残業代などの諸手当をプラスしたものになるので給与のほうが範囲が広くなります。

会社的には給与より外注費のほうがお得?

個人への支払いが外注費に該当すると、源泉所得税を徴収する義務がありません。

 

ただし、一部の報酬・料金には、源泉所得税の義務があります。

 

 

従業員と違い外注先には仕事量に応じて報酬を支払います。

 

業務がなければ報酬の支払いをする必要がなく、仕事内容によって支払う金額を変えることもできます。

 

従業員に対しては、そんなことできませんよね。

 

また、会社が消費税の納税義務者であれば、外注費には消費税が含まれるので消費税の納税額が少なくなります。

 

それと雇用契約を結んでいると社会保険や雇用保険の負担が生じますが、請負契約の場合には負担する必要がありません。

 

 

税務署に外注費が給与だと判断された場合

外注費のほうが会社の負担が減るケースが多いので、個人への支払いを外注費として処理をしたくなる気持ちもわかります。

 

その分、税務調査で外注費が給与だと認定されたときの影響も大きくなりますよ。

源泉所得税の徴収もれ

外注費として処理をしていたものが給与として判断された場合、まずは源泉所得税の徴収もれを指摘されます。

 

税務調査は最低でも3年分さかのぼって行われます。

 

3年分だと、数十万円以上の結構な金額になると思いませんか?

 

源泉所得税の納付が遅れると不納付加算税(納付すべき源泉所得税の10%)と延滞税という罰金がかかります。

 

報酬から10.21%の源泉徴収をしていたときは、そこまで影響はないかもしれません。

 

しかし、この事務処理がきっちりやれている会社は、そもそも給与を外注費として処理していることは少ないかと思います。

消費税の過少申告

外注費として処理をしていると、支払額の8%を売上に含まれる消費税から控除して納税することができます。

 

これが全額否認されるので、その控除した分を追加で納付することになります。

 

これも最低3年分です。

 

会社の規模によっては、数十万から数百万円の支払いが発生します。

 

また、少なく納税していたことに対して、過少申告加算税と延滞税という罰金がかかってきます。

外注費と給与を区別するための判断基準

うちは請負契約書を作っているから大丈夫!

 

いやいや、税務署はそんなに甘くないですよ。

 

判断一つで税金の額が変わってくるので、かなり細かくチェックします。

 

税金を計算する上では、常に形式と事実に基づいて総合的に判断されます。

 

最低限の判断基準は、国税庁の消費税法基本通達に。

 

 

1.その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか

 

仕事を請け負った本人以外(例えば、外注先の従業員やその下請けなど)が仕事をしても問題ないかどうか。

 

2.役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか

 

仕事の時間や進捗に関して仕事を請け負った側に裁量があるかどうか。

 

3.まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか

 

外注であれば請け負った仕事が完了していなければ報酬の請求もできません。

 

労働時間を基準として報酬の支払いがあった場合は、雇用契約としての給与と判断されます。

 

4.役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか

 

材料代や諸経費を受注者側が負担している場合は外注になります。

 

仕事を依頼した会社が全て負担しているときは給与と判断されます。

 

 

国税局の内部資料で外注費か給与かを判定する

東京国税局の内部資料には、上記の通達以外にも外注費か給与か判断するための項目がたくさんあります。

 

  1. 当該契約の内容が他人の代替を容れるか
  2. 仕事の遂行に当たり個々の作業について指揮監督を受けるか
  3. まだ引渡しを終わっていない完成品が不可抗力のため滅失した場合等において、その者が権利として報酬の請求をなすことができるか
  4. 材料が提供されているか
  5. 作業用具が供与されているか
  6. 雇用契約又はこれに準ずる契約等に基づいているか
  7. 使用者の指揮命令に服して提供した役務か
  8. 使用者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受けているか
  9. 継続的ないし断続的に労務の又は役務の提供があるか
  10. 自己の計算と危険において、独立して営まれているか
  11. 営利性、有償性を有しているか
  12. 反復継続して遂行する意思があるか
  13. 社会的地位が客観的に認められる業務か
  14. 労働基準法の適用を受けるか
  15. 支払者が作成している組織図・配席図に記載があるか
  16. 役職(部長、課長等)があるか
  17. 服務規程に従うこととされているか
  18. 有給休暇制度はあるか
  19. 他の従集員と同様の福利厚生を受けることができるか(社宅の貸与、結婚祝金、レクリェーション、健康診断等)
  20. 通勤手当の支給を受けているか
  21. 他の従業員と同様の手当を受けることが可能か(住居手当、家族手当等)
  22. 時間外(残業)手当、賞与の制度はあるか
  23. 退職金の支給の対象とされているか
  24. 労働組合に加入できる者であるか
  25. 支払者からユニフォーム、制服等が支給(貸与)されているか
  26. 名刺、名札、名簿等において支払者に帰属しているようになっているか
  27. 支払を受ける者の提供する労務が許認可を要する業務の場合、本人は資格を有しているか(例:運送業)
  28. その業務に係る材料等の在庫を自己で保管しているか
  29. 報酬について値引き、値上げ等の判断を行うことができるか
  30. その対価の支払者以外の顧客を有しているか
  31. 以前にも他の支払者のもとで同様な業務を行っていたか
  32. 店舗を有し一般客の求めに応じているものであるか
  33. その対価の支払者以外の者からの受注を受けることが禁止されているか
  34. 同業者団体の加入者であるか
  35. 使用人を有している者であるか
  36. 支払を受ける者がその業務について自己の負担で損害保険等に加入しているか
  37. 業務に当たって、支払者側のマニュアルに従うこととされているか
  38. 支払者の作ったスケジュールに従うこととされているか
  39. 業務の遂行の手順、方法などの判断は本人が行うか
  40. 本来の請負業務のほか、支払者の依頼・命令により、他の業務を行うことがあるか
  41. 勤務時間の指定はあるか
  42. 勤務場所の指定はあるか
  43. 旅費、交通費を会社が負担しているか
  44. 報酬の最低保障があるか
  45. 遅刻、無断欠勤の場合、それに見合う報酬が支払われないほか罰金(報酬の減額)があるか
  46. その対価に係る請求書等の作成がされているか
  47. その対価が材料代等の実費とそれ以外に区分して請求されるか
  48. その対価が経費分も含めて一括で請求されているか

まとめ

外注費か給与かはあまり意識せず、経費に計上している会社もあるのではないかと思います。

 

また支払う金額が少なくて済むから外注扱いにしているなんて会社もあるでしょう。

 

実際、税務署はこれだけ細かく見て判断しています。

 

税務調査で外注費が給与として指摘されるとその影響はかなり大きいです。

 

コスト削減だけに目を向けるのはやめて、しっかりルールを守りましょう。

 

まずは、消費税法基本通達の4項目をチェックしてみてください。