年末調整で寡婦控除・寡夫控除の適用を受けよう

寡婦・寡夫控除をご存知ですか?

 

あまり知られていない所得控除の一つだと思います。

 

私自身、年末調整の仕事を毎年していて、ほとんど見たことがない控除です。

 

要件に該当しているのに知らずに控除を受けていない方がいるのではと思い、記事にしてみました。

 

この記事を読んでほしい人
  • シングルマザー(母子家庭)の人
  • シングルファーザー(父子家庭)の人
  • 年末調整の担当者

 

この記事を読んでわかること
  • 寡婦控除の受け方
  • 寡夫控除の受け方

 

寡婦控除とは

タックスアンサー No.1170 寡婦控除

納税者自身が一般の寡婦であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを寡婦控除といいます。

 

寡婦って聞きなれない言葉だと思います。

 

  • 結婚していた女性が夫と死別・離婚してその後結婚していない人
  • まだ結婚しているが夫の生死が不明の人

 

どちらかに該当し、子供か親族を扶養している人のことを言います。

 

ざっくり、結婚していた女性がシングルマザーになったら対象になると覚えておけばいいかと思います。

 

後ほど出てきますが、法律上の婚姻関係がないと控除が受けられないので注意が必要です。

 

寡婦控除の対象となる人の範囲の詳細は、こうなっています。

 

  • 夫と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。
  • 夫と死別した後、婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などの要件はありません。

 

離婚をした人が寡婦控除を受けるためには、扶養している子供か親族が必要となっています。

 

女性の場合は、特別枠も設けられていて、次の要件を全て満たすと、特別の寡婦となり控除額が増えます。

 

  • 夫と死別し又は離婚した後、婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
  • 扶養親族である子がいる人
  • 合計所得金額が500万円以下であること。

 

結婚していた女性が夫と死別等で未婚の状態になり、子供がいて、年収が約689万円以下の方があてはまります。

 

控除額は、次の表のとおりです。

 

区分 控除額
一般の寡婦 27万円
特別の寡婦 35万円

 

所得税の最低税率が5%、住民税の税率が10%ですので、

  • 一般の寡婦:27万円×5%+27万円×10%=40,500円
  • 特別の寡婦:35万円×5%+35万円×10%=52,500円

の節税効果が生まれます。

寡夫控除とは

タックスアンサー No.1172 寡夫控除

納税者自身が寡夫であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを寡夫控除といいます。

 

男性の場合は、女性と違って初めから所得制限があるなど範囲が狭くなっています。

 

寡夫に該当するのは、次の3つの要件全てに該当する人です。

 

  • 合計所得金額が500万円以下(会社員だと年収ベースで約689万円以下)
  • 妻と死別し、若しくは離婚した後、婚姻をしていないこと又は妻の生死が明らかでない一定の人
  • 生計を一にする子(総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族になっていない人に限る)

 

また控除額も27万円の1種類だけです。

 

これは、父子家庭の収入が母子家庭よりも多いことが理由の一つだと思います。

 

実際に、厚生労働省が発表している「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」では、平均年間収入は母子家庭243万円、父子家庭420万円となっています。

 

ただ、あくまで平均ですので、収入が低い父子家庭向けに特別の寡夫という枠は設けておいて、年収などで制限すればいいのではと個人的には思います。

 

 

寡婦・寡夫控除を受けるときの扶養控除等申告書【記載例】

会社で年末調整を受けるためには、扶養控除等申告書という書類を書く必要があります。

 

寡婦・寡夫控除を受けるためには、赤枠で囲ったところに必要事項の記載が必要です。

 

 

ケースごとにどういう内容を記載すればいいか具体的にみていきます。

 

【寡婦に該当する場合】

「寡婦」のところにチェックを入れます。

 

そして「左記の内容」のところに寡婦となった理由、扶養している子供・親族の名前と所得の見積額を。

 

夫と死別、夫が行方不明のときは、その寡婦となった理由と、自分の所得見積額を記載します。

 

 

子供や扶養している親族に収入があるときは、だいたいの年収を聞いて、国税庁のホームページに載っている表を参考に所得を計算してください。

 

【特別の寡婦に該当する場合】

「特別の寡婦」のところにチェックを入れます。

 

「左記の内容」のところは、寡婦のときとほとんど同じです。

 

自分の収入が要件の一つですので、所得の見積額を必ず記載してください。

 

 

【寡夫に該当する場合】

「寡夫」のところにチェックを入れます。

 

男性の場合は、女性と違って収入が要件の一つですので、自分の所得見積額を必ず記載してください。

 

他の記載事項は、寡婦と同じです。

 

 

内縁・事実婚、未婚の場合はどうなる?

寡婦・寡夫控除は、離婚・死別などでシングルになった方が対象となりますが、前提として民法上の婚姻関係があったことが条件となっています。

 

役所に婚姻届を出しているかどうかということです。

 

そのため、内縁関係や事実婚など法的に婚姻関係にないときは、寡婦・寡夫控除を受けることができません。

 

また現状では、未婚の母・父も控除の対象にはなりません。

 

税法が民法の解釈をもとに対象となる範囲を定めているので、この部分が変わるには時間がかかると言われています。

 

ただ、正式な婚姻関係がなかったからといって税金の控除が受けられないのは、不公平ということで別の形で救済措置も設けられています。

 

厚生労働省が政令を改正し、全国の自治体に寡婦・寡夫控除のみなし適用を行うよう求めました。

 

税金の控除が受けられない分、市役所などの行政サービスでは優遇が受けられるようにする政策です。

 

具体的には、奈良市のホームページをご覧ください。

 

 

配偶者控除と寡婦(寡夫)控除は併用できる?

寡婦または寡夫は独身であることが条件の一つなので、配偶者控除との併用はできなさそうですよね。

 

実は、非常にレアなケースとなりますが、併用できます。

 

配偶者控除と寡婦・寡夫控除は、通常その年の12月31日の状況で判定します。

 

ただし、配偶者である夫または妻が年の途中で亡くなったときは、その亡くなった時点で配偶者控除の要件にあてはまるか判定を行います。

 

よって、配偶者が亡くなったときに配偶者控除の要件にあてはまり、年末に寡婦・寡夫控除の要件にあてはまると、両方の控除が受けられるということになるのです。

 

配偶者控除の詳しい内容については、こちらの記事でご確認ください。

 

空閑税理士事務所

平成30年から配偶者控除・配偶者特別控除の内容が大きく変わりました。配偶者控除については、顧問先のパートで働いている主婦…

 

まとめ

対象なのに意外と受けていない人がいるのではと思い、寡婦・寡夫控除を紹介しました。

 

デリケートな問題でもあるので年末調整の担当者も、わざわざこういった控除が受けられますよと教えてくれないかもしれません。

 

知っているだけで税金が安くなるのでぜひ自分で勉強して、控除を受けてください。

 

年末調整の担当者におススメの本です。