消費税が非課税となる取引とは?覚えるのは全部で17項目

経理初心者の方が、仕事を始めて戸惑うことの一つに消費税の処理があるかと思います。

 

なぜなら簿記の試験には、消費税の判定をする問題が出てこないからです。

 

消費税の非課税取引は、法律でその範囲が決まっています。

 

消費税がかからない取引の範囲を覚えると、今までより経理処理がきっと楽になるはずです。

 

この記事を読んでほしい人
  • 経理初心者の人
  • 経理担当者で消費税のことをもっと知りたい人

 

この記事を読んでわかること
  • 消費税の体系
  • 非課税になる取引の内容

消費税の取引分類

消費税では取引を以下の図のように分類し、消費税がかかるかどうかの判定を行います。

 

まず取引を国内取引・輸入取引・国外取引の3つに分類します。

 

今回のテーマである非課税取引は、オレンジ色の部分です。

国内取引

国内取引は、言葉どおり日本国内で商品を販売したり、サービスを提供すると該当します。

 

ただ、その取引が資産の譲渡等にあてはまるかどうかで、取り扱いが大きく変わります。

 

資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付け、サービスの提供のことを言います。

 

最初のポイントは、その取引が事業に該当するか。

 

例えば、商品の販売であっても個人間の売買(ネットオークションやフリマアプリなど)には、消費税がかかりません。

 

次にポイントとなるのが、対価つまりお金をもらうかどうかです。

 

無償でのやり取りについては、消費税はかからないということです。

 

また資産の譲渡等に該当しても、後述する非課税取引に分類されると消費税はかかりません。

 

国内取引→資産の譲渡等→課税資産の譲渡等というステップを経て、消費税が課税される取引だという判断が行われます。

輸入取引

海外から商品などを仕入れた場合、後述する非課税取引に該当しなければ消費税がかかります。

 

課税される消費税は、税関で納めることになります。

国外取引

海外での資産の譲渡、資産の貸付けやサービスに関しては不課税取引という判断を行います。

 

ただし、日本の消費税がかからないだけで海外にも消費税と似た性格の税金は存在します。

消費税の非課税取引とは

消費税では、以下の17項目を消費税のかからない非課税取引として定義しています。

 

本来は消費税を課税するべきだが、課税対象とすることになじまない、政策的に課税することが適当でないといった理由で非課税としています。

 

次の取引が非課税取引であることを覚えておけばいいでしょう。

 

その取引に消費税がかかるかどうか迷うことは少なくなります。

消費税の性質上、非課税となった取引

消費税はその性質上、モノの消費やサービスの提供に対して税金をかけることにしています。

 

次の8つの取引は、その消費税の性質とずれがあると考えられ、非課税取引として扱われています。

 

1.土地の譲渡や貸付け

 

土地には、借地権・地上権・永小作権など土地の上に存する権利も含まれます。

 

ただし、次のようなケースに該当すると、非課税取引にならず消費税がかかります。

  • 土地の貸付期間が1ヶ月未満の場合
  • 駐車場の貸付けなど施設の利用に伴い土地が使用される場合

 

2.有価証券等の譲渡

 

有価証券等とは、国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などのことを言います。

 

証券の発行がない株式、投資信託、国債、公債、社債なども有価証券等の仲間です。

 

なお、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権は、非課税取引に該当せず消費税がかかります。

 

3.支払手段の譲渡

 

支払手段とは、現金(紙幣、硬貨)、小切手、約束手形などのことを言います。

 

収集品(記念紙幣やコインなどでプレミア価格がついているもの)として譲渡すると、非課税取引に該当せず消費税がかかります。

 

4.預貯金の利子、保険料を対価とする役務の提供など

 

国債、社債、預金、貯金及び貸付金の利子が非課税。

 

また保証協会などに支払う信用の保証料、保険会社に支払う保険料、割賦販売やリース取引の手数料のうち利子や保険料に該当するものも非課税取引です。

 

5.切手、印紙、証紙の譲渡

 

郵便局や印紙売りさばき所で購入する切手、印紙は非課税です。

 

次の取引には注意してください。

  • コンビニで購入する切手、印紙は非課税
  • 金券ショップなどで購入する切手、印紙は課税

 

これは、日本郵便株式会社からの委託を受けているかどうかで取り扱いが変わるからです。

 

金券ショップなどは、委託を受けて販売しているわけではないので、消費税の対象になります。

 

6.物品切手等の譲渡

 

物品切手とは、商品券や図書カード、プリペイドカードなどのことです。

 

物品切手の購入は非課税取引ですが、例えば図書カードで書籍を購入する場合の、その書籍代には消費税がかかります。

 

7.国や地方公共団体が行っているサービスで、法令に基づき料金がかかるもの

 

登記や資格の登録などの際に支払う手数料や、住民票などの交付サービスを受ける際に支払う手数料が非課税です。

 

役所が行っているサービスに対する手数料全てが非課税取引となるのではなく、法律や条例に定められていないものは消費税がかかります。

 

8.外国為替業務に係る役務の提供

 

外国為替取引、対外支払手段の発行、対外支払手段の売買又は債権の売買が、非課税取引に該当します。

社会政策的な配慮から、非課税となった取引

次の9つの取引は、モノの消費やサービスの提供にはあてはまります。

 

しかし、次のような取引に消費税がかかると、社会的な反発が大きいと考えられ、非課税取引として扱われています。

 

9.社会保険医療の給付等

 

健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療などが該当。

 

10.介護保険サービスの提供

 

介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスなどが非課税。

 

ただし、サービス利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価には消費税がかかります。

 

11.社会福祉事業等によるサービスの提供

 

社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業などや更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供。

 

12.医師等による助産

 

医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供で、妊娠しているか否かの検査、妊娠していることが判明した後の検診、入院、分娩の介助などが非課税。

 

13.埋葬料や火葬料

 

墓地、埋葬等に関する法律に規定する埋葬や火葬。

 

14.身体障害者用物品の譲渡や貸付け

 

義肢、盲人用安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車いす、改造自動車などの身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負及びこれら身体障害者用物品の修理のうち一定のもの。

 

15.学校教育に関するもの

 

授業料、入学金及び入園料、施設設備費、入学又は入園のための試験に係る検定料などが非課税。

 

16.学校教育法に規定する教科用図書の譲渡

 

文部科学大臣の検定を経た教科用図書(いわゆる検定済教科書)及び文部科学省が著作の名義を有する教科用図書などが非課税。

 

17.住宅の貸付け

 

契約において人が居住用として利用することが明らかにされているもので、貸付期間が1ヶ月未満の場合は除きます。

 

店舗付き住宅や駐車場付き住宅の場合の店舗、駐車場部分については非課税取引に該当せず消費税がかかります。

 

居住用でなければいけないので旅館、ホテルの宿泊代は該当しません。

輸入取引にも非課税取引はある

国内取引と同じように輸入取引にも非課税の規定があります。

 

実務の中で発生することはほとんどないので、こちらは参考程度に確認するだけで大丈夫です。

 

有価証券等、郵便切手類、印紙、証紙、物品切手等、身体障害者用物品、教科用図書が非課税取引の対象。

 

 

非課税取引かどうか間違えやすいもの

住宅の貸付

人が住むためのマンションを、事務所やサロンとして利用することもあるでしょう。

 

住宅の貸付だからといって、非課税取引となるとは限りません。

 

こういったケースのときは、契約書を確認してください。

 

必ずその部屋の利用目的が、居住用か事務所用かの記述があるはずです。

 

非課税となるのは、人が住むことが契約で明らかになっているものだけです。

不動産の譲渡

不動産の譲渡で、建物と土地を一括で売却したときは注意が必要です。

 

土地の譲渡は、非課税取引ですが、建物の譲渡は課税取引です。

 

不動産の譲渡=非課税取引ではないので、土地と建物の譲渡は別の取引として処理をしてください。

一部の医療行為

医療行為、入院費用についても間違えやすいものがあります。

 

美容整形や差額ベッド代などの自由診療は、非課税取引に該当せず消費税がかかります。

 

また、ドラッグストアなどで購入する処方されていない市販の医薬品は、消費税がかかってきます。

 

大きな病院やクリニックの経理を担当している方は、消費税がかかるものとかからないものをきっちり区別しましょう。

まとめ

17項目を全て覚えるのは少し大変かもしれません。

 

まずはお勤めの会社の業務上、よく出てくるものだけでも覚えてみましょう。

 

特に切手や印紙の取り扱いは、購入場所で変わってくるので注意が必要です。

 

また貸付期間によって課税・非課税が変わってくるものもあります。

 

しっかりと取引の内容にも目をむけて日々の処理を行いましょう。

 

この本があれば消費税で迷うことはなくなると思います。

 

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