メリットのみ!法人を作ったら青色申告の届け出をしよう

この記事を読まれているということは法人の設立を考えているか、すでに法人を設立した状態で青色申告がどういうものか調べているところだと思います。

 

青色申告を選択すると事務処理が煩雑になるのではないかと不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。

 

ただあえて青色申告にはデメリットはないと言わせてもらいます。

 

青色申告を受けるためには法人税法で定める帳簿書類の備え付けが要件となりますが、こちらは事業をする上で当然作っておかなければいけないものです。

 

また税金の計算だけでなく銀行からの資金調達や会社の経営状況を客観的に分析するためにも、複式簿記に基づき作成された帳簿書類とその帳簿書類から作成された決算書が必要となってきます。

 

それでは、どうすれば法人で青色申告の適用を受けられるのか実際にどんなメリットがあるのか確認していきましょう。

法人で青色申告を受けるために

法人で青色申告により確定申告書等を提出するためには納税地の所轄税務署長に青色申告の承認申請書を提出しなければなりません。

 

青色申告には様々な特典があるためその提出には期限が設けられています。

 

一般的には、青色申告による申告書を提出しようとする事業年度が、開始する日の前日までが提出期限となります。

 

設立したばかりの法人の場合は、設立してから3ヶ月を経過した日かその事業年度終了の日のどちらか早い日の前日までとなります。

青色申告のメリット

青色申告には様々な法人税上のメリットがあります。

 

そのうち、代表的なものを紹介します。

欠損金の繰越控除

法人で青色申告を受ける上での最大のメリットと言っていいかもしれません。

 

ある事業年度で生じた欠損金(いわゆる赤字)を9年間繰り越すことができます。

 

 

単純化していますが、本来なら2〜4年目に合計で300の税金を納めることになります。

 

しかし、設立初年度に赤字が1,000発生していた場合には、この規定の適用を受けると税金を払う必要がなくなります。(均等割を除く。)

 

ただし、全ての法人で赤字を黒字から100%控除することができるわけではありません。

 

資本金が1億円以下の中小企業(資本金が5億円以上の大企業の子会社を除く。)に該当しない場合には、赤字を黒字から100%控除することができません。

 

控除割合は以下となります。

  1. 平成24年4月1日~平成27年3月31日開始事業年度・・・100分の80
  2. 平成27年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度・・・100分の65
  3. 平成29年4月1日~・・・100分の50

 

また、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる赤字については10年間繰り越すことができます。

少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

法人で30万円未満の資産(パソコンなど)を購入した場合に、一括でその購入した年度の経費(通常は減価償却を行います。)にすることができます。

 

ただし、その事業年度で一括で経費にできるのは合計で300万円までとなっています。

 

現在では平成30年3月31日までに取得したものが対象です。

特別償却・特別控除の適用

法人が法律で定められた範囲の設備投資をしたり、雇用を増やしたり従業員の給料を増やすと減価償却費を通常より多く計上できる特別償却や、税金が直接安くなる特別控除が認められます。

 

この特別償却や特別控除は名前の通り政策的な見地から特別に設けられているもので、平成◯年◯月◯日までと期限があるものがほとんどですので適用を受ける際には注意が必要です。

欠損金の繰戻しによる還付

欠損金の繰越控除は、ある事業年度に生じた赤字を翌年度以降の黒字と相殺する制度でした。

 

逆にこの欠損金の繰戻しによる還付は、赤字が生じた事業年度の前年度が黒字で法人税を支払っている場合に、その赤字と黒字を相殺して支払った法人税の還付を請求することができるという制度です。

 

ただし、この制度も全ての法人で利用できるわけではなく、利用できるのは資本金が1億円以下の中小企業(資本金が5億円以上の大企業の子会社を除く。)に限られています。

青色申告の承認を受けた後の注意点

法人で青色申告の承認を受けた後は、原則的に青色申告の取りやめの届出書を提出するまではその効果が続きます。

 

しかし、次の事由に該当すると強制的にその承認が取り消されてしまいます。

1.帳簿書類を提示しない

税務調査に当たり調査担当者が調査対象である法人に帳簿書類の提示を求めたがその提示を拒否した場合に、取消事由に該当してしまいます。

2.税務署長の指示に従わない

帳簿書類の備え付け等については法人税法に定められています。

 

その規定に則っていない場合には、税務署長より改めるよう指示がありますが、その指示に従わない場合には取消事由に該当してしまいます。

3.無申告で隠ぺい、仮装等をした

無申告の状態で調査が入り、所得金額の決定又は更正があった場合に、その事業年度の決定又は更正後の所得金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額が、総所得金額の50%を超えるときは取消事由に該当します。(その不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)

4.更正時に隠ぺい、仮装等をした

欠損金額を減額する更正をした場合に、その事業年度の更正により減少した欠損金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額が、当初の申告による欠損金額の50%を超えるときは取消事由に該当します。(その不正欠損金額が500万円に満たないときを除く。)

5.帳簿書類への記載が不十分である

帳簿書類への記載が不十分である等のため、法人税法の規定による推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合には取消事由に該当します。

6.修正申告等があった場合

期限後申告書又は修正申告書の提出があった場合に、その提出が調査を予知してされたものであるときは、それぞれの所得金額又は欠損金額につき3又は4の取り扱いを適用し、該当すると青色申告の承認が取り消されます。

7.無申告又は期限後申告の場合

2事業年度連続で申告書の提出がない場合(無申告)又は期限を過ぎて申告書を提出した場合(期限後申告)には取消事由に該当します。

個別的な取り扱い

1から7の事由に該当すると青色申告の承認が取り消されます。

 

しかし、役員その他相当の権限を有する地位に就いている者が知り得なかったこともやむを得ないと認められるなどその事実の発生について特別な事情があること。

 

かつ、再発防止のための監視体制を強化する等今後の適正な記帳及び申告が期待できるなどの理由がある場合は、青色申告の取り消しが見送られます。

まとめ

法人で事業を行っているとどれだけ素晴らしいビジネスモデルでも必ず赤字の年が出てきます。

 

しかし、青色申告を選択するだけでその赤字を使って合法的に支払う税金を減らすことができます。

 

他にも様々なメリットがあるので、法人を設立したら必ず届出書を提出しましょう。

 

法人を作ったものの仕事が忙しく提出を忘れていた場合は、次の事業年度が始まるまでに提出すれば大丈夫です。